今回読んだのは、心理学者のロバート・B・チャルディーニ氏の本です。
著者が心理学者なので、それぞれが実験に基づいています。
学校の外へでて、実社会へ「潜入」捜査しているので事例が興味深いです(衝撃だったというほうが正しいかも)。
はじめに 1章:影響を与える 2章:恩義――ゆずりあいに潜むワナ 3章:整合性 ――心の中の邪鬼 4章:社会的な証明 ――わたしたちの真実 5章:好意 ――人なつっこい泥棒 6章:権威 ――誘導される意志 7章:希少性 ――少数派のルール おわりに とっさに影響をおよぼす ――ハイテク時代の原始的な反応 |
「してもらったら同等のお返しをすべき」という心理
今回はとくに私が衝撃を受けた「恩義」について書いています。
章のタイトルのとおり、「恩義」にはワナがあるという話です。
わたしたちのまわりで見られるさまざまな影響力の中でも1、2を争うほどの効果の高いルール-----恩義のルールです。
このルールは言います、人は、他者にしてもらったのと同等のお返しをすべきだと。
「だれかに何かしてもらったら、なるべくお返しをしなきゃ。」って素直に考える人は多いと思います。
本の中でも書かれていますが、それが世の中をよりよくしているとのこと。
美しい心がけだと思うし、だれもお返しをしなくなった社会なんて殺伐としていそうでいやだな、と個人的には思います。
でも、この心理を利用されると、、、
望んでもいない親切をうけて、いったん受けてしまったものだから借りができたような気持ちになり、相手の望むものを与えてしまう。。。
たとえば、本の中で紹介されていたアメリカのある教団の話です。
この教団は通りで寄付金集めをしていました。
でも思うように集まらなかった。
ではどうしたか?
寄付を求める前に、相手に”プレゼント”をしたんだそうです。
本や教団誌や花を。
何も知らない通行人に花を押しつけて、どう言われようと決して返させない。
はっきり断ってもダメだそうです。
こうして、教団のメンバーは「恩義のルール」でその場を支配してから、寄付を募るのだそうです。
この、恩を売ってから寄付を乞うというやり方は大成功して、莫大な資金を得たとのこと。
これは昔の話なので、今はもう通用していないみたいなのですが。
アメリカの教団だから関係なさそうだけど、こういうことって日常でありませんか?
個人的な体験なのですが、新入社員の頃の話です。
同僚A君:それ手伝おうか?
自分:いや大丈夫だよ。たいした量じゃないから。(実際、全然余裕だった)
同僚A君:今、僕手空いてるから手伝うよ!
自分:(なんか悪いから手伝ってもらったほうがいいのかな)じゃこれお願いしてもいい?
その後のある日...
同僚A君:これ手伝って。
自分:え!今忙しい。
同僚A君:この前手伝ってあげたじゃん!だから手伝ってよ。
結局手伝いました。
そもそも、最初に手伝ってもらう必要性なんかまったくなかったんですけどね。
たいした量じゃなかったし、自分でできたしブツブツ・・・(笑)
親切で言ってくれてるからなんだか悪いと思ってお願いしたんです。
で、結局、自分が忙しい時に、された以上のお返しをしたという話です。
最初に親切を受けた時点で、私の立場は弱くなってますね。
同僚A君は詐欺師でもなんでもないので、全然問題ないのですが、
これが作戦として使われると、ワナにはまることになりますよね。こわくて親切が受けられなくなります。
本の中では、試供品や試食、グリーティングカードなどがあげられていました。
教訓:望んでいない親切でも、いったん受けてしまうと、借りができたような気持ちになる。
「人の親切は受け取らなければならない」という心理
相手の好意に”応えなければ”という思いは、恩義のルールの基本ですが、このルールを簡単に利用できるようにしているのはむしろ、相手の好意を”受け取らなければ”という思いのほうです。この思いのために、親切にしてもらいたい相手を選べず、選択の権利を相手に委ねることになるのです。
そんなこといわれたら、全部の親切を断ったほうがいいってこと? 本当に善意の人の親切さえ受けられないよ!と私は思いました。
それについて、本の中で述べられていたのは、
厚意は受けていい。
そして、いつかお返しをすることを約束する。
もし、相手の厚意が「イエス」をひきだすための手段だとわかったら、それなりに対応すればいいだけ、とのこと。
厚意は受けてもいいって書かれていたので、少しほっとしました。。。
「何かでゆずってくれた相手には、こちらもゆずらなければならない」という心理
私にとってこの心理が一番衝撃的でした。
知らなかったんです。
最初にふっかけたもん勝ちなんだなと学習しました。
本で挙げられた例は以下です。
男の子「今度の土曜ボーイスカウトが主催するお祭りがある。自分はチケットを売っている。1枚5ドルなので、何枚でもいいから買ってくれないか?」
著者:断った
男の子:「チケットを買わないんだったら、板チョコを何枚か買ってくれませんか?1枚たったの1ドルですから。」
著者:2枚買ってしまった
買ったとたんに、著者は今のはすごいことだったと思ったそうです。
これは恩義の影響が自動的に働いて、相手に「イエス」と言わせた見事な例だったと。
この例以外に実験もなされています。
はじめにかなり難しい要求をした後で、譲歩して、本来のささやかな要求をすれば、はじめからささやかな要求をされた時より、格段に「イエス」をひきだせる確率が上がるんです。
相手が譲歩してくれたから、こちらも譲歩しなきゃと感じて。
そもそも勝手に要求してきたのは相手だから、そんなこと感じる必要ないのに。
なんだか不公平だなと感じてしまいました。
人の心理を知っておくことは本当に大事だと思います!
まとめ
この本は恩義以外のルールについても書かれています。
この人いい人だなと思ったら。
この人信用できると思ったら。
有名な先生がいいというんだからいいんだろうと思ったら。
さっきまで自分が言ったことと矛盾してしまうから断れないと思ったら。
それはテクニックとして相手から影響力を行使されているのかもしれません。
ほしくもない物を買わなきゃいけないのかな、と悩んでしまうようなやさしい人、多くの善良な人にこそ読んでほしい本だとと思いました。(逆に悪い人には読んでほしくない本・・・)
最後まで読んでいただいてありがとうございました。 🙂